山極 壽一 YAMAGIWA Juichi
総合地球環境学研究所 所長
京都大学 名誉教授
前京都大学総長
講義概要
現代は人新世と言われ、地球環境が大きく破壊される危機の中でこれまでとは全く違った暮らし(ニューノーマル)を組み立てねばならないと言われている。そのためには、人類の歴史を有史以前に遡り、生物としての進化史を類人猿と比べ、人類がどのような心身の変化を経験して現代に至ったかを概観する。その上で、農耕・牧畜開始以来の文明史の中で人類が道を踏み外したと思われる点を探し出し、情報通信機器が急速に発達し、超スマート社会を迎えるなかで人間の心身と人工的な環境との間でどんなミスマッチがあるかを考察する。さらに、10年後、30年後の未来にふさわしい幸福な社会とは何かを考えてみることにする。
世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか
今、人間の歴史を見直す作業に注目が集まっている。それは人間と社会がどのようにできたのか、これからどのようになって行くかについて信頼できる見取り図が描けないからである。さらに地球の平均気温の上昇によって自然災害が頻発し、カーボンニュートラルやSDGsなど地球規模で待ったなしの対策が迫られている。そこで、人間の歴史を有史以前に引き伸ばして考えることによって、人間と社会の本質を明らかにし、人間にとって真の幸福とは何かを問うことにする。それは、未来社会を具体的に構想するうえで大きな一助になるだろう。
講師プロフィール
経歴
1952年東京都生まれ。京都大学理学部卒、同大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。理学博士。ルワンダ共和国カリソケ研究センター客員研究員、日本モンキーセンター研究員、京都大学霊長類研究所助手、京都大学大学院理学研究科助教授、同教授、同研究科長・理学部長を経て、2020年まで第26代京都大学総長。人類進化論専攻。屋久島で野生ニホンザル、アフリカ各地で野生ゴリラの社会生態学的研究に従事。日本霊長類学会会長、国際霊長類学会会長、日本学術会議会長、総合科学技術・イノベーション会議議員を歴任。現在、総合地球環境学研究所 所長、2025年国際博覧会(大阪・関西万博)シニアアドバイザーを務める。南方熊楠賞、アカデミア賞受賞。
著書
『人生で大事なことはみんなゴリラから教わった』家の光協会(2020年)、『スマホを捨てたい子どもたち-野生に学ぶ「未知の時代」の生き方』ポプラ新書(2020年)、『京大というジャングルでゴリラ学者が考えたこと』朝日新書(2021年)、『猿声人語』青土社(2022年)、『動物たちは何をしゃべっているのか?』集英社(2023年共著)、『共感革命-社交する人類の進化と未来』河出新書(2023年)、『森の声、ゴリラの目-人類の本質を未来につなぐ』小学館新書(2024年)など多数。