小川 順 OGAWA Jun
京都大学大学院農学研究科 教授
講義概要
微生物は地球上に広く存在し、多様な物質循環を担っています。これからの地球社会が目指す持続的社会は、微生物のこの物質変換能力に支えられた健やかな物質循環と、授受関係にある生物間の健全な相互作用が保たれている社会と考えます。本講義では、「微生物は環境調和型の未来産業を牽引する」、「微生物は我々の健康を支える」、「微生物は生物間相互作用を介して物質循環を駆動する」の3軸から微生物の力の活用事例を紹介するとともに、未来社会創造に貢献しうる微生物の無限の可能性を議論したいと思います。
世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか
人類は、微生物の存在を認識する以前から、その多様な力の恩恵に与ってきました。食における発酵醸造の技術がその良い例でしょう。近代科学により、微生物の物質変換能力が様々に解明される現代、微生物が作り出す分子の多様性によって、食品の健康機能、土壌の肥沃さ、水の美しさがもたらされることが理解されてきています。微生物の能力を理解し、その機能が最大限に発揮される環境を築くことが、ヒト、社会、そして地球の健康を実現し、持続的循環型社会を創造することにつながると考えます。
講師プロフィール
経歴
1967年滋賀県生まれ徳島県育ち。1990年京都大学農学部農芸化学科卒業。1995年同農学研究科農芸化学専攻博士後期課程修了(博士(農学))。1995年京都大学農学部・助手。2006~2007年フランス国立農業研究所客員研究員。2008年京都大学微生物科学寄附研究部門・特定教授。2009年より京都大学大学院農学研究科・教授(応用生命科学専攻・発酵生理及び醸造学分野)。
研究テーマと抱負として、微生物に多様な機能を探索し、それを社会のために役立てる研究をしたい。趣味は、クラシック音楽(オーボエ演奏・指揮)、酒遊食楽。
2004年農芸化学奨励賞。2006年日本農学進歩賞。2018年食品免疫学会賞。2020年Ching Hou Biotechnology Award(American Oil Chemists’Society)。2021年Chevreul Medal Award 2021 (French Society for the Study of Lipids)