森 重文 MORI Shigefumi
京都大学高等研究院 院長・特別教授
講義概要
数学は一般の方からは、その名前のため数の学問だと思われがちです。科学技術を記述する言語だと言われれば良い方ですが、実はアイデアを記述する言語でもあります。それ故に、発想・思考する学問であり、芸術にも繋がります。
社会が安定的に発展していた時代には、仕事の上で経験を基にして判断・決定できる場合が多かったかも知れません。しかし、21世紀になってからは未経験な出来事が頻発し、将来はその傾向が更に強まると予想されています。従って、数学的な思考力に基づいた論理的な考察を加味することが必要ではないでしょうか。
本講座では、論理・発想を科学してみたいと思います。具体的な例に基づいて数学的思考力とはどんなものかお話したり、数学者がどのように研究対象を捉えるのか、科学と芸術の似た点・異なる点などについてご説明したいと思います。
講師プロフィール
経歴
1951年愛知県名古屋市生まれ。1973年京都大学理学部卒業。1975年京都大学大学院理学研究科修士課程修了、理学博士(京都大学)。1975年京都大学理学部助手。1980年名古屋大学理学部講師。1982年名古屋大学理学部助教授。1988年名古屋大学理学部教授。1990~2016年京都大学数理解析研究所教授。2011~2014年京都大学数理解析研究所所長。2016年より現職。外国滞在歴として、ハーバード大学助教授(1977~1980年)、プリンストン高等研究所研究院(1981~1982年)、コロンビア大学客員教授(1985~1987年)、ユタ大学客員教授(1991~1992年)など。専門は代数幾何学の研究。ハーツホーン予想を解決した論文は、数学の歴史に刻まれる功績となった。この論文を手がかりにした「森理論」(代数多様体の極小モデル理論)で1990年にフィールズ賞受賞。2015年~2018年アジア初の国際数学連合総裁。井上学術賞(1989年)、アメリカ数学会コール賞(1990年)、日本学士院賞(1990年)、フィールズ賞(1990年)、文化功労者(1990年)、米国芸術科学アカデミー外国人名誉会員(1992年)、日本学士院会員(1998年)、藤原賞(2004年)、名古屋大学特別教授(2010年)、ロシア科学アカデミー外国人会員(2016年)、米国科学アカデミー外国人会員(2017年)、日本数学会賞小平邦彦賞(2019年)、京都府文化賞特別功労賞(2020年)、文化勲章(2021年)、トリノ科学アカデミー外国人会員(2023年)など。