藤田 正勝 FUJITA Masakatsu
京都大学 名誉教授
講義概要
京の知の伝統、京都大学の伝統の一つに、西田幾多郎をその祖とする「京都学派」の哲学がある。それは近年、諸外国でも大きな関心を集めている。この講義では、「京都学派」がどのような集団であり、彼らが何をめざしたのか、現代の視点から見たときその意義はどこにあるのか、諸外国の研究者からどのような関心をもって読まれているのか、等々について考えてみたい。
「京都学派」の哲学者たちが重視した考え方に「主体的な思索(ゼルプストデンケン)」があり、また、その根底に「無」の思想がある。そのような点を中心に、「京都学派」の哲学について、分かりやすくお話ししたい。
世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか
哲学は直接的な効果や利益を生む学問ではない。しかし、人間とは何か、われわれは何のために生きているのか、あるいは何をめざして生きればよいのか、そのようなもっとも根本的な問いに取り組もうとする学問である。 西田幾多郎や田辺元、九鬼周造、三木清ら、「京都学派」に属する哲学者たちは、そのような問いをめぐって、自立した思索を行い、西洋の哲学の物まねでない独自の哲学を作りあげていった。われわれが何か新しいものを、創造的なものを作りあげようとするとき、彼らのそのような格闘から多くのものを学ぶことができるのではないだろうか。
講師プロフィール
経歴
1978年京都大学大学院文学研究科単位取得満期退学。1982年ドイツ・ボーフム大学哲学部ドクター・コース修了(Dr. Phil.)。1983年名城大学教職課程部講師。1988年京都工芸繊維大学工芸学部助教授。1991年京都大学文学部助教授。1996年京都大学大学院文学研究科教授。2013年京都大学大学院総合生存学館教授。現在は京都大学名誉教授。
著書
主な業績に、Philosophie und Religion beim jungen Hegel. Unter besonderer Berücksichtigung seiner Auseinandersetzung mit Schelling. Hegel-Studien, Beiheft 26. 1985 Bonn, Bovier、『若きヘーゲル』創文社(1986年)、『西田幾多郎 - 生きることと哲学』岩波書店(岩波新書)(2007年)、『西田幾多郎の思索世界 - 純粋経験から世界認識へ』岩波書店(2011年)、『哲学のヒント』岩波書店(岩波新書)(2013年)、『日本文化をよむ』岩波書店(岩波新書)(2017年)。