土井 隆雄 DOI Takao
京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授
宇宙飛行士
講義概要
1961年ガガーリンによる人類初の有人宇宙飛行以来、宇宙は人類にとっての進出可能な新世界となった。日本の『第一期有人宇宙活動』は、1985年に国際宇宙ステーション計画への参加決定及び第一次材料実験に参加する日本人宇宙飛行士の選抜により始まった。日本は短期有人宇宙ミッションを通して、宇宙実験技術、ロボットアーム操作技術、船外活動技術など有人宇宙活動に必須な技術を獲得した。『第二期有人宇宙活動』は、2008年「きぼう」日本実験棟を宇宙ステーションに取り付けるミッションを契機に始まった。日本人宇宙飛行士による長期ミッションが開始され、宇宙飛行士訓練、有人宇宙施設の運用、宇宙貨物船の飛行などの技術を獲得した。日本そして世界の有人宇宙活動は何をめざし、私たちはどこに行こうとしているのだろうか。
世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか
霊長類の祖先がかつて森林からサバンナへ進出したことが人類進化を誘発したように、地球を離れ宇宙をめざす有人宇宙活動は進化の一形態とも考えられる。そう遠くない未来、人類は宇宙空間をも居住空間とし、そこに新たな社会を創造するだろう。私たちは、今、宇宙を切り開く有人宇宙活動のための新しい総合科学を「有人宇宙学」と名付けることにしよう。それは、人類が宇宙に展開していくことを記述できる学問である。有人宇宙学の創出は、「ソーシャル・ハビタビリティ(人間社会の存在可能条件)」という宇宙に持続可能な人間社会を構築するための新しい指標の確立・体系化を可能にする。「ソーシャル・ハビタビリティ」は、物理的・生化学的条件のみでなく、技術やそこに居住する人類のコミュニティの制約条件によって左右される社会存在の限界を定量的に決定する新たな指標である。
講師プロフィール
経歴
1954年、東京生まれ。1983年、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。2004年、ライス大学大学院博士課程修了。工学・理学博士。1997年、スペースシャトル「コロンビア号」に搭乗し、日本人として初めての船外活動を行う。2008年、スペースシャトル「エンデバー号」に搭乗。ロボットアームを操作し、日本初の有人宇宙施設「きぼう」日本実験棟船内保管室を国際宇宙ステーションに取り付ける。2009年から2016年にかけて、国連宇宙部で国連宇宙応用専門官として宇宙科学技術の啓蒙普及活動に取り組む。2002年と2007年には超新星を発見する。 2016年4月より京都大学宇宙総合学研究ユニット特定教授に就任。2020年4月より京都大学大学院総合生存学館(思修館)特任教授、2020年7月より特定教授。