共生の不安と連帯の可能性
「交差性」の視点は我々をどこに導くのか

2024.2.16.Fri. 13:10-15:50

東京大学大学院総合文化研究科
教授 清⽔晶⼦

講義の概要と目的

DEI(Diversity, Equity, & Inclusion 多様性、公平性と包摂)と言い、インターセクショナリティ(Intersectionality 交差性)と言うときに、私たちはそれらの概念をどのように理解しているだろう。本講義では、性の政治にかかわるフェミニズムやクィアの政治と理論の歴史を簡単に遡りつつ、集団に適度に豊かな刺激と彩りとをもたらすものとしてではなく、集団の外縁を脅かし、集団内に不協和と不都合と不安をもたらすものとしての、多様な他者との共存について、そして、そのような自己とは異なる「他者」との緊張感に満ちた連帯の必要について、考えてみたい。

この研究が世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか

私たちは、自己とは異なる他者をどのように無害化し、さらには有効に活用するのか、そのための意識と技術は磨いてきたと言える。その反面で、完全には無害化できず、有効な活用もできない他者と、それでも時空を同じくするための倫理や方法、あるいはその必要性や可能性については、十分に練り上げられてきたとは言えない。世界のそれぞれの地域間あるいは地域内での「分断」や「対立」が以前になく指摘される今日、私たちは持てる知を総動員して「他者との共生」の可能性について考え直す必要があるだろう。

講師プロフィール

経歴
東京大学大学院総合文化研究科教授。東京大学大学院人文人文社会系研究科で学んだ後、カーディフ大学ウェールズ校批評・文化理論センターで博士号取得。修士(文学)、MA(Sexual Politics)、PhD(批評・文化理論)。教養教育高度化機構のD&I部門長として、東京大学教養学部前期課程におけるD&I教育の統括、および日本の大学では最初となるセイファー・スペース(駒場キャンパスSaferSpace)の立ち上げと運営に携わる。専門はフェミニズム理論、クィア理論。現在の研究上の関心は、フェミニズムにおける本質主義論争と身体の地位をめぐる理論史、反ジェンダー運動とその東アジアにおける拡散、連帯における他者性と緊張など。著書に『読むことのクィア』(共著)『ポリティカル・コレクトネスからどこへ』(共著)『フェミニズムってなんですか?』などがある

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