待鳥 聡史 MACHIDORI Satoshi
京都大学大学院法学研究科 教授
講義概要
今年11月には、アメリカ大統領選挙・連邦議会選挙が行われる。ドナルド・トランプが大統領に復帰する可能性が語られ、いつも以上に個人に注目した情報が多い。しかし、アメリカは今日まで続く最古の憲法典を持ち、三権分立と連邦制により特定の政治勢力への権力集中の回避を徹底するなど、政治の制度化を大きな特徴とする国家であり、政治指導者の個人的属性が影響する余地は限られている。この講義では、歴史的な展開と、政治制度の国際比較における特徴に注目することで、現代アメリカ政治の基本構造を明らかにする。それを通じて、受講される方が選挙に前後して溢れる大量の政治情報に溺れることなく、アメリカ政治の的確な将来展望を得られるようになることを目的とする。
世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか
政治学を含む社会科学の研究成果は、直接世の中を変えることを目的にはしていない。しかし、その成果を
受け止める人が、研究対象となっている事象や人物への理解を深め、現象が生じている理由を知ることで、自
らの立場や行動を変化させると、世の中を変えることになる。今回の講義の場合も、トランプが大統領に復帰
する可能性がなぜ生じているのか、そもそも彼はなぜ大統領の地位に就いたのか、そして復帰した場合にど
のような変化をもたらすのか、といったテーマについて、長い時間軸や幅広い比較を通じて考察することで、
受講される方が現代アメリカ政治との向き合い方を変えることにつながるかもしれない。
講師プロフィール
経歴
1971年生まれ。京都大学法学部卒業、同大学院法学研究科博士後期課程(政治学専攻)退学。京都大学博士(法学)。大阪大学法学部助手・助教授、京都大学大学院法学研究科助教授などを経て、2007年より現職。2022~24年、京都大学公共政策大学院長。この間、ウィスコンシン大学大学院政治学研究科、カリフォルニア大学サンディエゴ校大学院国際関係論・太平洋地域研究科で在外研究。専門は比較政治論、とくに民主主義体制下での大統領や首相の権力基盤、議会や政党との関係について研究している。
著書
主要業績として、『財政再建と民主主義』有斐閣、アメリカ学会清水博賞(2003年)、『首相政治の制度分析』千倉書房、サントリー学芸賞(2012年)、『代議制民主主義』中公新書(2015年)、『政治改革再考』新潮社(2020年)、Political ReformReconsidered, Springe(r 2023年)など。