芦名 定道 ASHINA Sadamichi
関西学院大学神学部 教授
講義概要
この講義では、キリスト教史における多様な戦争論を、三つの類型(絶対平和主義、聖戦論、正戦論)に整理した上で、現代世界において現在進行中の戦争をめぐる問題について考察が行われる。ウクライナとガザの問題は、宗教的背景から見るときどのように理解できるだろうか。現代の戦争はどのような特質をもっており、宗教との関連はどのように捉えたらよいだろうか。こうした考察を通して、平和を論じるための手がかりを得ること、現代世界についての理解を深めることが、本講義の目的である。特に、近代以降の問題状況(政教分離、信教の自由、自由教会)における、キリスト教の絶対平和主義(あるいは非暴力抵抗運動)の可能性と意義について考えてみたい。
世の中をどのように変えるのか、どんなインパクトがあるのか
キリスト教思想における「戦争と平和」をめぐる研究成果を参照することによって、現代世界そして日本社会
が直面する「平和」の実現という課題について、重要な手がかりを得ることが期待できる。というのも、宗教(キリスト教はとくに)は、古代から現代に至るまで、さまざまな仕方で戦争と関わってきたのであり、また平和思想の重要な担い手の一つだからである。たとえば、「台湾有事」という言葉にも示されているように、ウクライナやガザの問題は、遠い国のお話ではなく、グローバル化した現代世界の中で生きる日本にとっても密接な関わりを持っている。平和構築は、世界の、そして日本の重要課題であり、人文社会学系の平和研究がもつ意義は小さくないだろう。
講師プロフィール
経歴
1956年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程(キリスト教学)単位取得退学。京都大学博士(文学)。京都大学大学院文学研究科助教授(キリスト教学担当)。現在は、関西学院大学神学部教授。
著書
『東アジア・キリスト教の現在』(三恵社、2018年)、『現代神学の冒険』(新教出版社、2020年)、『脳科学とキリスト教思想』(三恵社、2022)年など。