第7期受講生インタビュー〈8〉 | 京都大学ELP
京都大学エグゼクティブリーダーシッププログラム

第7期受講生インタビュー〈8〉

2022年11月19日

メーカー 管理職

 

粟野 特に印象に残った講義を教えていただけますか。

受講生 一つは、千玄室先生の茶道の講義です。テキストがある講義ではなく、先生の存在自体が全てを語っているという感覚で。 講義後に録画映像も視聴して全部文字起こしもしてみました。多分これはもう2度と聞けない話だと思いましたし、恐らくこれから何度も読み返すと思います。人が生きるということ、人の極限、それを乗り越える知恵、どこを切り取っても、いろいろな気づきをいただきました。

受講生インタビュー
もう1つが芦名正道先生のキリスト教の講義です。最も具体的な気づきをいただいたのは、芦名先生の講義かもしれません。そもそも普遍というものも最初からあったわけではなく、 始まりがあったんだというお話をキリスト教とか人権の事例からご説明いただきました。もともとは異端であったはずのキリスト教が、今も続いてるってなんだろうっていうところから、普遍にも始まりがあるということと、普遍が普遍であり続けるかどうかはわからないということを教えていただきました。

先生からのコメントには、普遍がちゃんとそれに相応する価値を認め続けられること、承認され続けることが 大事かもしれませんね、とありました。能の講義でも時々の世俗を取り入れて変化したというお話がありましたが、まさにその承認される行為とも理解できるな、とか。例えば資本主義のように当たり前になってるものなら、尚さらその強さが本当に正しいかどうか、ちゃんと証明されなきゃいけないでしょうし。弱い普遍性もあるのかもしれないなど。そんなところまで視野が広がりました。

粟野 深いところまで思考を巡らされてますね。それでは次にELP全体を通じた印象をお聞かせください。

受講生 受講する前に漠然と感じたり考えたりしていたことが、ELPで色々な方のお話を聞く中で、やっぱりそうかって確信に変わったことが大きな経験、学びでした。例えば、複雑なものをつい、因数分解したくなる。 細かく整理して考えてみようとしますが、必ずしも答えが出なくて。 これは難しいことですが、複雑なものを複雑なまま捉えるというアプローチもあってもいいし、そっちの方が謙虚だなって思えます。いくつかの講義でもそんなお話もいただいて、やっぱりそうだったのかという自信になりました。

あとは「間」。西田哲学はいろんなところで出てきますよね。意図的に引用されてる先生もいれば、直接的じゃないけれども使われてる先生もいらっしゃいました。

私の仕事で言えば、嗜好品を取り扱っているため、どうしても好きな方、そうでない方と分けて考えてしまいがちなんですけど、このアプローチだといつまでたっても隔たりが生じてしまうので、そうじゃなくて、そもそも人は、という話題から始めてみたり、ここにこそ「間」の概念を取り入れてみたりすることで、新たな取り組みを見出すことができるのではと考えたりしています。

あとはELPで出会う仲間の存在がやっぱり大きいな、これも得難い経験だなって思ってます。

 

粟野 興味深い気付きですね。ありがとうございます。ELPでの学びをお仕事やキャリア、ご自身の人生にどのように活かせますか。

 

受講生 いくつかありますが、はじめの一歩になるのは会社の仲間とか家族や友人など、身近なさまざまな人との対話のきっかけですね。例えば 会社のホワイトボードに橋本幸士先生の講義で教えていただいた宇宙を支配する数式を書いてみたんです。そうすると、立ち止まって、これなんですかって話をしてくれる人が出てきます。そこで、細かい中身というよりは、ここに私とあなたがいてね、みたいな話から、次元が異なるものが一緒になるってすごいですよねと話をしつつ、今やってる仕事は大変だけど、あの数式も複雑に見えるけど、考えようによってはシンプルだと。我々が見てるものって本当に複雑かなっていう問いかけのきっかけになっています。

次に、仕事柄いろんなことを伝える場面がありますが、例えば、「間」とか「複雑なもの」が伝わるといいなって思います。講義を私1人でとどめるのはもったいなくて、そのまま教えることはできないのですが、どうやって共有できるかな、ということを考えています。

最後に、お客様の趣味嗜好が益々多様となり、仕事を取り巻く環境も大きく変わってきている中で、私が社内で渡せるものって答えじゃなくて、物事の考え方だったり、捉え方だったり、あとは問いを立てましょうっていうところだと思うんです。そういうギフトを一人でも多く渡せると嬉しいなって思っています。

 

粟野 それでは最後に、これから受講される方へのメッセージをお願いします。

 

受講生 ELPの講義は先生と受講生が一緒に作っていく講義だと思ってまして、この言い方が合っているかわかりませんが、未完成の講義だと思っています。問いとか学びは先生との双方向のもので、参加者の声も本当そのうちの大事な1つなので、思ったことを素直に自然に喋ればいいなって思います。これをどう活かすかは、自分次第。学べて楽しかったね、で終わらせずに、これをどう深掘りしていくか。いかようにでもまだまだ続けられるので、講義が終わってもずっと学べる。そんな学びを教えていただけるのがELPだと思ってます。だから、未完です。学ぶことに終わりはないんです。

粟野 どうもありがとうございました。

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